いきものノート(かけだし)

生きものについて学んだこと、感じたことを

半クローン、他種の男もたらしこむ

本日は生物の神秘を感じる記事のご紹介です。

だいぶ前の記事だけど。

 

アイナメ属半クローン雑種の正体は ホストを乗り換えて永続するゲノムだった(北海道大学,2016/9/28)

 

 

北海道の海に住む魚、スジアイナメ

近縁種のクジメとアイナメと交雑して雑種をつくっているという。

そしてその雑種が「半クローン」という超特殊な生殖方法をとっている。

これまでの人類の半クローンへの理解では、長く生存できないはず...と考えられていた。にも関わらずアイナメ属半クローンは生存している。

たまたま雑種が生まれやすいのか...それとも何か生き残る術があるのか...

そんな研究です。

 

 

 

...今回のテーマ、アイナメ属の「半クローン」とは?。

 

この記事によると、半クローンとは以下の通り。

個体発生では両親双方から由来する遺伝子を使うが,配偶子を作る際には父種由来の遺伝子を捨て,母種由来のゲノムだけを子に伝える特殊な遺伝様式のこと

 

自分自身は父親、母親両方の遺伝子を持っているけど、子供をつくるときに父親からもらった遺伝子を捨てて、母親からもらった遺伝子だけで卵子をつくる、そんな感じらしい。

だから一応、雌雄が必要だから有性生殖の一部にはなるのかな。

 

このアイナメ属半クローンの仕様は、スジアイナメの母親由来のゲノムだけを子供に伝えている。

(下図の右「半クローン生殖」の『A』が母親由来のゲノム(遺伝子セット)に相当)

 

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https://www.hokudai.ac.jp/news/160929_fsc_pr.pdf



クローンとは違うの?というと微妙に違って、

クローンは親から無性生殖等により生まれた全く同一の遺伝子をもつ生命体。

半クローンは一応、相手がいるからクローンではない。

 

たとえば身近な生物でクローンといえばアブラムシ。

アブラムシのメスは無性生殖で子供(クローン)をどんどん産める。だから、驚異的な速度でアブラムシは野菜にまとわりつける(※閲覧注意)。

(アブラムシ - Wikipedia)

(アブラムシも無性生殖ができるだけで有性生殖します。)

 

 

かといって、我々ヒト含め大多数の生物がとる生殖方法ともまた微妙に違う。

通常の有性生殖の配偶子形成では、減数分裂時の組換えによって自分の両親からもらった2つの遺伝子セットをいろいろ組換えた、様々な遺伝子の組み合わせの配偶子を作れる。

⇒もし自分が悪性の突然変異を起こしていて悪い遺伝子を部分的に持っていたとしても、それが全ての子供には伝わらない

 

 

一方、アイナメ属の半クローンでは減数分裂せずに父方由来の遺伝子を捨てて配偶子をつくる。

つまり、

「自分(メス)の母方からもらった遺伝子だけで作った配偶子」

+「相手(オス)の配偶子」で子供を作る

 

この点が種の生存を考えた時に大問題

 

半クローン生殖は減数分裂をしないから、

もし自分が悪性の突然変異を起こしていて悪い遺伝子を部分的に持っていたら、それが自分の全ての子供、ひいてはさらにその子も悪い遺伝子を引き継いでいく。

世代を重ねるほど悪い遺伝子が蓄積してしまう。

⇒いずれ絶滅する 

 

...なのになぜ、北海道の海でこのアイナメ属雑種は存在しつづけているのか?

 

 

 

当然ですが、生存しているということは解決方法をもっていたのです。

さすがです。さすがは試される大地北海道の海で生き残ってきただけのことはある。

 

どうやって解決したか。

 

 

⇒一旦元の種のスジアイナメと交配し、減数分裂できる世代を挟むことで悪い遺伝子が生じても排除するようにしてた

 

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https://www.hokudai.ac.jp/news/160929_fsc_pr.pdf

そういえばこの半クローン雑種、元々はスジアイナメの母方のゲノムを引き継ぎつづけていましたね。

 

だから、この半クローン雑種がスジアイナメのオスと交配すると、事実上スジアイナメになるわけですよ(上図の「キャリアー」)。

(「キャリアー」というのは、実際にはこの半クローン現象は「半クローン遺伝子」によって引き起こされていると考えられているため、半クローン雑種ではないけど半クローン遺伝子を持っている、という意味で「キャリアー(運び屋)」とされていると思われます。)

 

この「事実上スジアイナメ」は半クローンでも雑種でもなんでもなく、ただのスジアイナメなので普通に減数分裂して配偶子がつくれるから、ここで半クローン雑種にはできなかった「悪い遺伝子の排除」ができるということ。

 

この仕組みによって他種(クジメ,アイナメ)のオスとの交配もできるし、悪い遺伝子が蓄積する弊害も避けられるから生き残っていけるね!ってことらしい。

 

アイナメ属半クローン、とんだ男たらし。

 

 

 

というわけで、超特殊生殖スタイル半クローン、意外にもうまくやっていたという今回のお話でした。

 

 

 

個人的な疑問点が2つあって

①そもそも半クローン雑種を形成するメリットが何か?

②半クローン遺伝子の近傍に悪い突然変異がおきたらそれを排除できない、またはいずれ半クローン遺伝子ごと排除されるのでは?

 

①に関してはちょろっと考えると、雑種強勢による生存力の向上?交配相手が増えることによる有利さ?あたりが思い浮かぶけど、どうなんでしょうか。

②についてはありえそうな問題だと思う。①のメリットが非常に大きくて半クローン遺伝子が保存される方向にある...ということなのかもしれない。

 

 

 

遺伝学おもしろい。

生物の巧妙な生存戦略には神の存在が垣間見える、気がする。

性決定と性転換 〜メダカのジェンダー論〜

research-er.jp

 

性転換。

 

性差別やらジェンダーやら、性に関わる言説が飛び交う人間界をあざ笑うかのように、魚類のみなさんは性別をいともたやすく転換しやがります。

われわれ人間からするとそんなバカな、って話だけど。

海水魚のベラとかはメスばっかりの集団だとそのうち一番大きい個体がオスになってハーレムを形成することもあったりして、なんとも、うらやましい。(?)

 

 

さてさて、今回は緑色の光をメダカにあてたら性転換しちゃったよっていう、もう性の概念ってよくわかんねえなってニュース。

人間に例えて言えば、中学生ぐらいの女の子に緑色の光をあててたら男の子になっちゃった〜的な。なんてラノベだ。

 

https://research-er.jp/img/article/20190226/20190226131956.png

(引用:世界初の発見!?緑の光を当てるとメスからオスに!大学院生が発見 | 国立大学法人 鹿児島大学

 

 

そもそも性別ってどうやって決まるの?って話だけど、

まず我々ヒト含め哺乳類は基本的には遺伝的に性別が決まっていて、性染色体の組み合わせ、すなわちオスになる精子とメスになる精子のどっちと受精したかでほぼ決まってしまう。

(胎生だと発生段階の遺伝子発現が外部の環境に影響されにくいから?(※個人的な見解です))

 

でも他の脊椎動物では様子がちがっていて、受精した段階での性は哺乳類と同じように決まっているんだけど、爬虫類とかは卵時代の温度でもともとの性別から変わったりする。

Special Story:雄と雌が決まる仕組み 魚から鳥,哺乳類まで - JT生命誌研究館

「性の可塑性」が高いというか、どっちかっていうと哺乳類がガチガチなのか。

世界は広い...。

 

 

今回のニュースのメダカもやっぱり性の可塑性が高くて、もはや卵どころか生まれたあとからも性転換できちゃう。

なんかもう、メダカとか魚類のレベルになると、生殖細胞の数のバランスが変わるだけで性転換おきちゃうらしい。メダカ界では性差別とかないんでしょうな。

(参考:名古屋大学生殖生物学グループHP

 

 

まあそんなジェンダー論を飛び越えるメダカでも、さすがに特定の波長の光を当てただけで性転換おきちゃうっていうのはかなりすごい話のようでして。

温度とか水質変化とかホルモン注射みたいな生命活動に直接影響を及ぼすような要因じゃなく、「光」だけで性転換っていう、魚類の「性の可塑性」がこれまで考えられていた以上に高いものなのでは、というインパクトがありますね。

 

他の魚類にも応用できるなら養殖分野でかなり使い道がありそう。光だけなら楽だしねえ。

 

いずれ人間にも使えるようになったら、各方面で批判は半端じゃないだろうけど、救われる人もきっといるんじゃなかろうか...

いや、さすがに魚並みにポンポン性別変えられたら社会ぶっ壊れるけども。

 

メダカがジェンダー論を変える日も近い、かもですね。

COBOTTA

 

安全柵不要のデンソーウェーブ初の人協働ロボット「COBOTTA」の受注を11月29日から開始 | ロボスタ

 

だいぶ昔の記事ですが、最近仕事の関係で少々ロボットに触れる機会が増えたからたまにはロボットの話でも。

 

 

COBOTTA。

デンソーウェーブの小型協働ロボット。

ちなみにロボットに付属するカメラはキヤノン製。

 

形は産業ロボットだけど、目指すところはラインでの使用ではなさそう。

 

オフィスや研究室のような工場とは違った空間にある単純作業を代替してくれるようなロボットのイメージ

 

いろいろ使い道はありそう。

研究室なら時間ごとにサンプルを取り出したりする単純作業とか

オフィスでも書類の整理とかも任せられそうだね。

 

 

けども実際のところ、

・COBOTTAのティーチング(ロボットに動作を覚えさせる作業)がどれくらい簡単か?

・COBOTTAがティーチング通りの動きで仕事ができるように、周辺のセッティングがどれだけ必要か?

このへんのノウハウが必要にはなりそう

 

特に後者、イメージだけだとロボットの近くにおいたものを勝手にいろいろやってくれちゃう感じだけど、

ロボットて基本同じ動きしかできないから毎回決まったところに決まったものを置かないと、希望通りに動いてくれないんじゃないだろうか。

 

それを考えると、たとえばさっきの研究室でのサンプル取り出し作業とかも、

 

・サンプルが決まった場所に置かれている(順番ごとにずらすとかはできると思うけど)

・決まった置き場所がある

・取り出し位置から置き場所までのロボットの軌道に干渉するものがない

 

くらいは最低でも考慮しなきゃいけない。

あと可動範囲内にするとか、掴むロボットハンドをどんな形状・種類にするのかとかも検討しなきゃいけないんじゃなかろうか。

 

 

工場よりは実生活に近い使用を想定しているんじゃないかと思うけど、

そのへんのノウハウがないと素人のわれわれが導入するにはまだハードルが高そうだなあ

(あと200万はちょっと高すぎ)

 

 

とはいえ、こういうロボットが身近になり始めるといよいよ近未来だ、増えていくのがたのしみ。

 

 

COBOTTAでいろんなアプリケーション開発して、技術コンサルで儲けられそうな気もしなくもない?

 

 

生物の美

 

1mm未満の極小生物が、巨大生物の進化を促す「エンジン」だった!(須藤 斎) | ブルーバックス | 講談社(1/2)

 

生きものがもつ美しさに惹かれてしまうのって、ある種本能的なものではないかと思ってる。

 

甲虫に子どもが惹かれるのとか、特にそうだと思うんだよね。

 

なんなんだろうか、生きものの美しさというか、魅力?

構造的な美しさもそうだし、システムとしての美しさもまたすごい。

 

どう考えても神の所業。

あらゆる生物を神さまが作ったとする大昔の人たちの気持ち、一周回ってよくわかる。

こんなもの、本当に時間をかけるだけでできんのかねえ。

犠牲の上に生きているのです

 

南アフリカのサイの密猟が大きく減少し、1000頭を下回る |WWFジャパン

 

密猟で数を減らして、絶滅へと向かっていくサイ。

 

日本でいうところのウナギもそう。

(余談も余談ですが僕はウナギを食べないマンとして生きることを決めています)

 

感情的にも生態系的にも、かけがえのない種が消えてほしくないから、密猟や乱獲はやめてほしいっていうのはその通りなんだけど、密猟者や漁師からすれば、生きるための手段であって。

 

月並みな意見でしかないけども、その人たちに密猟・乱獲させないためには経済的なところから変えていかなきゃいけないんよねえ。

 

別に彼らだって好き好んで密猟してるわけじゃないでしょう。

まあ、狩りが好きというのはあるかもしれないけど、危険が伴うかつ違法であることを知らないわけはないから、収入の最適な手段ではないし。

 

ウナギに関しては食文化ってのも絡むから、一概に金銭的な話で終わらないけどねえ。

だけど文化のために一つの種を失うほどの代償を払わなければならないのか?って言ったらな、そこはどうなんすかって話よ。

獲れなくなったら、結局漁師さんも飢えるし食文化も消えるわけですし。

 

 

まあ結局、

サイの角から作られる漢方とか、ウナギがウメェっていうことに市民からの需要があるから成り立っていることもあるわけで、需要を断てば必然的に密猟も乱獲もなくなるはずなんよね。

 

だから対症療法的に密猟者を取り締まったり漁獲高を調整させたりするのも必要だけど、

それを欲してる人たちの意識も変えてかないと、根本から断つことは難しいよね。

 

 

と、ごく一般的な意見と理想論に終始してしまったけど、どうかみなさまにも間接的にも密猟・乱獲に加担しているかもしれないという意識を持っていただければ、幸いです。

 

ウナギ食べるの減らしてこ、まあ確かに、あれの蒲焼きはウメェけども。

 

鏡のむこうの自分

2019年2月12日ニュース「『鏡に映る自分』が分かる魚を初めて確認 魚類も『鏡像自己認知』あるのでは、と大阪市立大グループ」 | SciencePortal

 

魚が鏡に写った自分を自分だと理解した。

やるやんけ。

 

(具体的には、ホンソメワケベラが体につけられたマークを鏡で見て、その部分を寄生虫だと勘違いして擦り取ろうとする行動が見られた)

 

漫画とかでも文明の発達してない世界で育った人が、鏡に写った自分を自分だと最初は信じられない、なんてことがあるけども。

 

 

鏡のむこうのヤツを自分だと理解できることを「自己鏡像認知」っていうらしいんだけど、

人間だと2歳ぐらいからできるようになるものなんだって。

https://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_20190217191325.pdf?id=ART0009884464

 

Are animals self aware? on Vimeo

(鏡に写った自分を警戒してるネコが可愛いだけの動画)

 

 

人間以外ではチンパンジーとかシャチとかが自己鏡像認知ができるとのことだけど、ネコとかニホンザルは今のところできた報告はない。

 

けど、今回初めて魚類(ホンソメワケベラ)で自己鏡像認知が確認された。

魚類すげーな。

 

 

 

うーん、しかし、

脊椎動物の進化の過程をごく単純に考えれば、魚類から進化した哺乳類であるネコやニホンザルにできないわけない、と考えちゃうんだよな。

さらにいえば、人間でも2歳前後からしかできない自己鏡像認知を、寿命が2-3年しかないとされるホンソメワケベラ(今回の実験では何歳だったかは不明だけど)にそれができたのもすごすぎる話。

 

もし今回の実験系が、これまで様々な動物に対して行われていた実験と同じ手法をとれていたと仮定すれば、

自己鏡像認知は必ずしもその種に備わっている学習能力と紐付いているわけではないことになる。

しかも進化の系統分岐のあちこちで、できたりできなかったりしちゃう。

 

と考えると、なんだか不自然な気もする。

 

 

個人的には、ホンソメワケベラで自己鏡像認知ができたことを疑っているわけではなく、自己鏡像認知の有無を確認するテストが、これまである程度統一された評価方法(時間?行動の変化度合?とか)で行われてきていたのかが疑問。

(というか、今回の実験の評価が他の動物に比べて甘い?)

 

統一規格をつくって再度一斉テストしたらどうなるんだろうな、なんて。

他の魚類や、爬虫類、両生類の結果も気になるところですねえ。

 

 

 

 

とはいえ、魚だからって認知能力低いとかバカにしちゃいけないことがよくわかった記事でした。

水族館のむこうにいる魚たちもこっちを見て何か思ってんのかなあ。

 

 

僕ら人間は明日からまた1週間が始まるんだよ、魚たち。

また1週間がんばりましょう。

 

ではまた。

いきものがかりになりたかった

はじめまして、daoです。

日記がてら、ブログでもはじめようかな、なんてね。

続けられるよう、がんばります。薄い更新でも続けることが大事。

 

簡単に自己紹介です。

 

神奈川うまれ、神奈川そだち。

大学時代は札幌で生物系の研究をしてました。

いまは精密機械メーカーではたらいております。

 

精密機械メーカーで働いておきながら、いまだに生物学への未練があったりして、

その鬱憤をはらしたくて、ブログを始めてみようと思ったのです。

 

なので、ブログでは生き物関連のはなしを主に書きたいと思ってます。

あとは生き物の写真とか、勉強したこととか、書評とかもかけたらいいなあ。

備忘録もかねてぼちぼちと。

 

とはいえ、オフホワイトな会社で働いているから、平日更新できるかなあ。

マイペースに更新していきます。